長野県の養殖魚の主流であるニジマスは、育てやすく肉質もよい反面、IHN(伝染性造血器壊死症)などウイルス性の病気に弱いという欠点があります。そこでこうした病気に強いブラウントラウト(ヨーロッパ原産の鱒)と交配させることで、両方の長所を持った魚を開発しました。
⇒両方の長所を持つ魚
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両方の長所を持つ魚
普通、ニジマスとブラウントラウトを交配させても、その子どもはほとんど死んでしまいます。
そこで、
(1)普通のニジマスの受精卵(2n=二倍体)に高い水圧をかけて染色体を2倍(4n)に増やします。
(2)成長した四倍体(4n)の雌から採った卵子にブラウントラウトの精子を受精させ、三倍体を作ります。三倍体は、雄も雌も子どもを生むことはありませんが、雌は卵をもたないため、その栄養が成長にまわり通常よりも大きくなり肉質もよくなります。
(3)ブラウントラウトの雌を雄性ホルモンで性転換させ、将来雌になるX精子しか作らないようにして四倍体ニジマスの卵子と受精させます。
こうして、すべて雌の三倍体(信州サーモン)が生まれます。
長野県水産試験場が開発したこの技術(4倍体を使ってすべて雌の雑種三倍体を作り出す)は、全国初の手法です。
水圧処理で4倍体を作り出すのは難しいことであり、3倍体を効率よく作り出す技術を確立したことは、「世界的成果」だと高い評価をいただいています。
水圧によって染色体を倍増させていますが、これは「遺伝子組み替え」とは異なるものであり、雑種や3倍体を作り出す技術は、植物の育種でもよく利用されているもので、食品としての危険性は全くありません。また、万が一、三倍体魚が自然界に逃げ出しても、すべて繁殖能力がない雌なので、野生種と交雑して生態系を乱すこともありません。
稚魚から約2年で全長50~60cm、体重1.5~2kgに成長します。